日本の「研究力」の低下が指摘されている。その原因は何か。国が進める競争政策に、問題はないのか――。国立大学協会会長で京都大総長の山極寿一さん、国の予算をあずかる財務省主計局次長の神田真人さんに聞いた。山極さんは「研究費の『選択と集中』政策は間違いだ」と主張。これとは逆に、神田さんは「競争がなければ、日本は廃虚になってしまう」と訴える。
日本の研究力が低下している。2003年〜05年と13年〜15年のそれぞれ3年間の平均を比べると、日本発の論文数は減り、世界シェアは2位から4位に。影響力が大きい、他の論文への引用数がトップ10%の論文のシェアも、4位から9位に後退した。
過去の日本人ノーベル賞受賞者を始め、多くの研究者が原因として指摘するのが、04年の国立大法人化とともに始まった国の「競争政策」による影響だ。
国は教員の人件費や研究室の維持などに使われる基盤的経費である「運営費交付金」を年に1%ずつ削減し、代わりに、研究者が応募・審査を経て獲得する「競争的資金」を増やした。大学間の競争を促すさまざまな補助金も導入した。選ばれた少数の研究者や大学に多額の資金を投入し、効率良く成果を引き出そうとする「選択と集中」と呼ばれる政策だ。
その一方、例えば論文数の減少は法人化より前から始まっていたというデータもあり、統計上、因果関係は必ずしも明らかではないという指摘もある。
国立大協会長×財務省主計局次長、2人の主張は…「国立大の法人化は失敗だった」と語る山極・京大総長。これに対し、「法人化は運営面の自由度を高めた」と主張する神田・財務省主計局次長。二人の考えは、様々な面で対立しています。研究費の「選択と集中」はいったい何をもたらしたのでしょうか。このあとのインタビューで読み解きます。
日本におけるトップ10%論文…残り:4420文字/全文:5014文字
2018年10月16日18時36分
朝日新聞デジタル
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