ロボット掃除機「ルンバ」を展開するアイロボットジャパン(東京都千代田区)が7万円(税別)の中位モデルの価格を一気に2万円下げる低価格路線に打って出た。
掃除機市場全体が頭打ちとなるなか、ロボット掃除機市場でシェア6割を誇る最大手による事実上の低価格路線への転換は、「危機感」の表れともみてとれる。
掃除機市場の勢力図が変わる可能性もあるだけに注目が集まっている。一体、何があったのか…。
同社は10日、丸ごと水洗いできるダクト容器を初めて採用したロボット掃除機「ルンバe5」を26日から販売すると発表した。
1回の稼働時間が高級モデルと遜色のない90分に伸びたうえ、スマートフォンによる操作で、外出先から掃除を始めることができ、終了後に通知が届く機能も付く。
だが、価格は4万9880円(税別)と、5万円を切る設定に変更する方針転換を打ち出した。
■頭打ち市場に危機感
この日、発表会に出席した挽野元(はじめ)社長は、この理由について、「一家に1台普及させたいからだ」と強調。
普及促進に向け、店頭プロモーションの強化に乗り出す方針も明らかにした。
背景には、ロボット掃除機の販売の伸びが頭打ちになってきたことが大きい。
実は、日本市場はアイロボットにとって米国に次ぐ、世界第2位の販売数の重要市場。平成18年に日本市場に参入してから、今年9月末までに累計で300万台を販売している。
ところが、ルンバが牽引(けんいん)する形で、29年に前年比8%増と3年連続で伸びていたロボット掃除機の市場は、
今年上半期(1〜6月)の販売が9%減(GfKジャパン調べ)と一転マイナスになるなど、振るわなかった。これに「危機感を抱いた」(家電大手)とみる向きが大きい。
■5年以内に普及率10%へ
これまでの「ルンバ」は、「ロボットが掃除する」という発想の面白さやモデルチェンジするごとに進化する期待を裏切らない開発体制が購入動機だったといえる。
現在の最上位モデルは、カメラを利用して、家庭の自宅マップを作成していく新しいアルゴリズムを採用。これまでのランダム走行よりも効率化が図れる「優れもの」だ。
だが、ロボット掃除機は、本格掃除機ではない。平日の忙しいときは「ルンバ」、休日はキャニスター型と使い分けるユーザーがほとんど。
「あれば便利で欲しいけど、なくては困るメーン機ではない」(都内在住の主婦)というのがユーザーの本音のようだ。
販売の伸びが鈍化し始めたが、今後、まったく角度の違う斬新な進化を見込むことが難しい。
ならば、いまのうちに価格を下げて、一気に普及させてしまおうというのがアイロボットの戦略とみられる。
まずはルンバの現在の世帯普及率4・5%を、5年以内に10%に引き上げたい考えで、
この理由について挽野社長は「かつての洗濯機や冷蔵庫もそうだが、10%になれば、普及率が加速度的に上がるため」としている。
5万円を切る価格に設定したのは、これまで価格の高さに躊躇(ちゅうちょ)していた層を掘り起こすためで、「共働き世帯」「高齢者」を中心に便利さを訴求していく考えだ。
(経済本部 飯田耕司)
アイロボットジャパンのロボット掃除機「ルンバe5」。水洗いできるダクト容器を採用した=10日、東京都千代田区(飯田耕司撮影)
https://sokuhou.matomenow.com/wp-content/uploads/2018/10/20181026-00000514-san-000-view-1.jpg
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181026-00000514-san-bus_all