韓国における元徴用工の裁判で、韓国の最高裁にあたる大法院が10月30日に判決を言い渡す。
日本側には厳しい判決が予測されており、日韓関係の悪化が懸念されている。
元徴用工が新日本製鉄(現・新日鉄住金)を相手取って起こした民事訴訟の場合、原点は1997年に遡る。
時系列を表にしてみた。
https://sokuhou.matomenow.com/wp-content/uploads/2018/10/1810290601_2-714×649-2.jpg
戦前、韓国は日本の植民地だった。第2次世界大戦の戦局が悪化してきた1944年、 日本は「日本国籍を有していた朝鮮人」にも労務動員を行う。
海を渡らせ、日本国内の炭鉱や製鉄所、工場などに勤務させた。
元徴用工の訴訟とは基本的に、勤務先の環境が劣悪だったことに対する慰謝料や、未払い賃金の請求、日本企業の謝罪などを求めたものだ。
日韓関係に詳しくない方は、従軍慰安婦問題との違いに混乱されるかもしれない。
現代朝鮮研究家で麗澤大学客員教授の西岡力氏(62)に解説を依頼した。
「慰安婦問題でも93年に訴訟が起こされましたが、日本政府と元慰安婦に明確な雇用関係はありませんでした。 その上で日本政府の法的責任を求めるという主張でしたが、徴用工の場合は旧新日鉄や三菱重工業が原告を雇用していたことは事実です。 この違いは大きいでしょう。ただ、今回の原告の中には44年より前に勤務している男性もいます。本来の戦時動員に該当するのかは議論があります」
違法な強制労働を認めた判決はあっても、日本の司法は元徴用工の「個人請求権」を認めることはなかった。
日本と韓国は65年、日韓請求権協定を結び、徴用工などの個人請求権を“解決”したからだ。
1951年9月にサンフランシスコ平和条約が結ばれ、日韓は翌10月から日韓基本条約を締結するため協議を開始する。
当初は難航するが、61年の軍事クーデターで朴正熙(1917〜1979)が大統領に就任すると交渉は加速する。
ご存知の方も多いだろうが、朴槿恵・元大統領(66)の父親だ。
「条約の交渉過程では、軍人や軍属、そして徴用工の未払い給与など、日本が有する債務の問題についても話し合いが行われました。 日本は個人補償を申し出たのですが、韓国側は政府への一括支給を主張して譲りませんでした。 こうして日韓請求権協定が結ばれ、日本は韓国に無償資金3億ドル、有償資金2億ドルを支払うことで解決に至りました。 韓国の国家予算の2年分という巨費で、日本の外貨準備高も18億ドルしかなく、10年の年賦にしてもらっています」(同・西岡氏)
この巨額資金を朴正熙大統領は国内インフラの整備事業に投資し、「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ばれる経済成長を実現したのは有名な話だ。
「さらに2005年、日韓交渉の外交文書が公開された際、当時の盧武鉉大統領(1946?2009)が委員会を設置し、改めて日韓請求権協定について議論をさせています。 そして『65年の請求権協定で、日本から得た無償3億ドルの経済協力金に、徴用工の補償資金は含まれている』との見解を発表しています」(同・西岡氏)
つまり、徴用工に個人請求権は存在しないということを、韓国政府は2回も確認していることになる。
にもかかわらず、大法院は日本側に厳しい判決を下すことは、もはや折り込み済みになっている。
何しろ表の通り、「判決を不当に引き延ばした」として最高裁の次長が逮捕されてしまったのだ。
「05年の委員会には文在寅大統領が政府高官として関与していました。10月30日に韓国の大法院が下す判決は、自国の大統領も参加して積み上げた議論さえ否定する、とんでもない内容かもしれません」(同・西岡氏)
大法院が賠償判決を確定させると、今後の懸念点は2つ。
1つは訴訟の増加だ。
慰安婦本人や遺族が氏名を明らかにして訴訟に踏み切る精神的ハードルは極めて高い。
だが、元徴用工や遺族に、そうした逡巡があるはずもない。
事実、最高裁の差し戻し判決が出てから、日本企業を相手取った訴訟は増加している。
韓国政府は「強制労働の戦犯企業」299社を発表しており、そこには日本のトップクラスの企業名がずらりと並ぶ。
主張する対象被害者は22万人。もし本人や遺族が集団提訴を行い、1人1000万円(1億ウォン)の賠償が認められると、単純計算で2.2兆円に達してしまう。
※続きはソースでご覧ください。
https://www.dailyshincho.jp/article/2018/10290601/?all=1&page=1