防衛装備庁は11月13日、今年7月に受領した戦闘機用プロトタイプエンジンXF9-1が、地上運転試験においてこれまでに、アフターバーナー使用の最大推力15トンを達成したことを明らかにした。さらに2017年には現用各戦闘機用エンジンを上回る摂氏1800度のタービン入口温度(燃焼器出口温度ともいう)を達成していることなどから、「日本の航空エンジン技術は世界レベルに達しつつある」(航空装備研究所エンジンシステム研究室・枝廣美佳技官)との見方を示した。同庁主催の「防衛技術シンポジウム2018」で口頭発表およびポスター発表、画像公開により同エンジンの研究進捗状況を発表したもの。
将来の大電力化にも対応
スターター・ジェネレーターを装備
プロトタイプエンジンXF9-1は防衛省が2010年に策定した将来戦闘機の研究開発ビジョンに載っている「ハイパワースリムエンジン」を実現すべく、要素研究から各構成要素試作、コアエンジン(圧縮機、燃焼器、高圧タービンで構成)試作を経て、エンジンシステム全体の試作として、今年6月に完成した。
その主要なコンセプトは、(1)将来戦闘機の高運動、高機動を実現するハイパワー、(2)正面面積の低減によるステルス性向上と機内容積の有効活用に資する小さなエンジン直径(スリム)であること。これに加えて(3)将来戦闘機に求められる十分な電力供給としている。
大電力は操縦系統の電動アクチュエータ採用やレーダーなどのアビオニクスの大電力化によるもので、そのためXF9-1では80キロワット級のスターター・ジェネレーターを搭載している。エンジンを始動するスターターと発電機は従来別々の機器であったが、これを統合し、従来の数倍の発電量を発揮する小型、省スペースのスターター・ジェネレーターを試作し、搭載した。そうした機能についても、これまでの試験を通じて、確認されつつある様相だ。
スリム化ではエンジン直径がF-2戦闘機用F110エンジンより3割程度スリム化している計算になるという(推力レベル換算で)。これはファンの単位面積当たりの流量向上と高圧力化などにより達成されている。
また、軽量化に資するものとしては、圧縮機は動翼全段(3段)にディスクとブレードを一体構造とするブリスク構造を適用している。加えて大推力を達成する燃焼温度向上のため、燃焼器には新たな燃焼方式の広角スワーラ燃焼方式を採用し、二重壁複合冷却構造による効率的な冷却方式を適用しているという。
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