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通夜を行わずに葬式だけを行う「1日葬」が県内で増えている。青森市の葬祭業者では約2割が1日葬になっている。「近親者が高齢になってあまり参列者を見込めない」「参列者に負担をかけたくない」として、1日で弔いの儀式を終えるケースが多いという。遺族側の経済的な問題なども背景にあるとされる。寺院関係者からは「儀式の簡略化は望ましくない」と懸念する声がある一方、「単身世帯の増加、高齢化が進む中、1日葬は今後も増えるのではないか」とする声もある。
青森市の赤城美津子さん(65)は10月中旬、青森市の葬祭ホール「平安閣」で、母・山崎きささん=享年96=の葬式を行った。通夜を行わず、火葬と葬式、法事などを1日で済ませた。「母のきょうだいや友人も高齢となり、出席が難しくなっていた。下北地方や東京の親戚に2日間にわたり、青森にいてもらうのは心情的につらかった」(赤城さん)。葬式には35人が参列。後日、落ち着いてから新聞に死亡広告を載せた。「周囲の人の負担が少なくて済み、結果的に良かった。1日で終えたからといって、故人を粗末にしているわけではない。供養する気持ちは変わらない」と振り返った。
平安閣を運営するリンクモアの船橋素幸社長は「月40件ある葬儀のうち約2割は1日葬。遠くに住む親族らに配慮するケースが目立つ」と語る。「少子高齢化や単身世帯の増加などによって、葬儀の小規模化は進んでいる。今後も増えるのではないか」とみる。
弘前市の葬祭業者も「親戚と疎遠となり通夜に呼ぶ人がいなく、経済的な理由もあって、1日葬を選ぶ人は増えている」と説明した。
八戸市の葬祭業者によると、同市では、青森市や首都圏ほど1日葬は多くないという。「確かに1日葬は増えているが1割程度。1日で済ますのは『亡くなった人に失礼』というお寺もある」と八戸市の葬祭業者。他の業者は「病院治療費がかかったので、1日葬で安くしたいという人もいる。ただ、お寺が好まない場合がある」と話した。
寺院側の考え方もさまざまだ。八戸の住職は「故人や遺族のためにも、通夜と葬儀は行うべき」と述べる。一方、同市の他の住職は、弔われない人が増えている現状を説明し、「遺体を火葬場に直接送る『直葬』よりは、1日でもやった方がいい」と理解を示す。弘前市の住職は「1日葬は、本来の姿ではないし、お布施にも影響が出るので正直歓迎しない。ただ、時代の流れなので仕方ないという気持ちもある」と明かした。
第一生命経済研究所の主席研究員・小谷みどりさんは、首都圏での葬儀の半数は家族葬で、そのうちの半数は1日葬になっている現状を説明。「近親者がゆっくりと時間を過ごす告別の場として葬儀を行う流れが強くなる中、2日にわたって儀式を行う必要性は少なくなっている。今後、家族ホールのような小規模施設が増えるだろう」と語った。一方、首都圏では3割の人の葬式が行われず、弔われない人が増える傾向があることを指摘し「生きているうちに、周囲とのつながりを築いておくことが大切」とも語った。
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