開始直後に強烈なチャージを受けた。緑の背番号16が腿の辺りを押さえてピッチに倒れ込む。苦痛に顔が歪んだ。
「相手のサイドバックは自分のことを確実に潰そうとしていましたよね」
東京Vの左サイドで攻撃の起点となった佐藤優平は、相手のマークの厳しさをそう振り返った。実際、開始直後に受けたファウルは、田口泰士からのものだったが、いずれにしても、東京Vのパス供給源となる佐藤に対しては、磐田も徹頭徹尾、警戒を緩めなかった。
「ボランチでは梶(梶川)が出ることによってビルドアップに推進力が出ると思うし、(井上)潮音にもそういう力があると思う。ただ、そこが肝だったけど、上手く機能しなかった」
佐藤は試合のポイントをこう語ったが、相手の凄まじいプレッシングに対して後手に回った東京Vの選手たちからは試合後、やはり力の差を認めるコメントが続いた。
「あそこまでプレッシャーをかけてくるとは思わなかった」(林陵平)
「2年間積み上げたもので勝負しようと思ったが、正直それも出せなかった」(井上)
力の差を認めた一方で、やり切れない想いも口にしたのが佐藤だ。完敗を喫して実力不足を痛感するコメントが多いなか、レギュレーションによる戦い難さがあったことを明かしている。
「相手は引き分けでもOKというアドバンテージは、Jリーグや日本協会が決めたことですけど、納得いかないところはあります。アドバンテージがあることで、相手は(敵のやり方を見て)完全に自分たちの対策をすればいいだけになる。そういう計算できる戦い方ができますし」
そうした佐藤の言葉には、どこか自分たちのスタイルを貫いて、ここまで勝ち上がってきたことへのプライドも感じられた。さらに、今回のJ1参入プレーオフを振り返つつ言葉を紡ぐ。
「J2同士の戦いなら、1年間通して戦ってきた結果として3位から6位まで差が生まれる。でも決定戦は、J1とJ2の違いはあるけど、(直接は)関係ないですからね。結果的に相手のホームで3連戦やりましたけど、非常にタフな戦いをしたと思います」
ただの3連戦ではない。敵地で初めから1点のビハインドを負うなかでの3試合だ。J2同士の戦いは勝ち抜けても、J1の牙城はあまりにも大きかった。
一方で「あのプレッシャーになれているかどうかの差は大きかった」と佐藤は言う。磐田との差を問われると、「技術と自信と。やっぱり相手は自信を持ってプレーしていたと思います」とレギュレーションの是非とは関係なく、素直に彼我の差を認めていた。
12/11(火) 12:16 サッカーダイジェスト
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181211-00051324-sdigestw-socc