2016年度の日本の電子マネー決済は10兆円以下、キャッシュレス決済比率は20%にとどまっている。
スマートフォンの普及とともに、急速にキャッシュレス化が進み、スマホ決済が約1600兆円、キャッシュレス決済比率が60%を超える中国とは対照的だ。
最近では長足の進歩を遂げる中国のイノベーションに対する日本の遅れが指摘されることも多い。
ここ数年でキャッシュレスが席巻した中国の事情を見てみたい。
先日、久しぶりに出張で訪れた北京では、訪問先のオフィスビルの1階に中国のインターネット通販大手「京東」の無人スーパーがオープンしていた。
この無人スーパーは会員制だが、スマホさえ持っていれば、その場で会員登録ができる。
「顔認証」を使用するため、スマホの写真機能を用い顔写真も登録する。
入店の際はスマホのQRコードをかざし、顔認証を受ける必要がある。
商品にはすべてRFシールが貼られ、決済も「RFID」の技術を活用。
「RFID」とは商品情報を埋め込んだタグを近距離無線通信でやり取りするもので、在庫管理等に用いられている。
この技術により、客は店から出る際にゲート前で顔認証を受けるだけで、購入したい商品は自動的に決済される。
日本でも既に見られる無人レジでは、客は商品のバーコードを読み取らせる必要があるが、その手間もない。
もうレジさえ必要ないという訳だ。
棚への商品の補充は人間が行うため、本当に「無人」という訳ではない。
ただ、中国企業が既にキャッシュレス化を前提に、技術革新に向けた試行錯誤を不断に実施していることに深い印象を受けた。
中国で2016年ごろから急速に進んだキャッシュレス化を後押ししたのはスマホだ。
京東と並ぶ電子商取引(EC)大手「阿里巴巴(アリババ)」は通販サイト「淘宝網」をスマホサービスで拡大。
ネットサービス大手「騰訊(テンセント)」はLINEの中国版「微信(ウィーチャット)」を世に問い、手軽にメッセージをやりとりできる同アプリは一躍ヒットした。
日本のキャッシュレス決済の担い手はクレジットカードと電子マネーだが、中国のキャッシュレス化を推進したのは、このアリババとテンセントという巨大IT企業だった。
アリババは決済サービス「支付宝(アリペイ)」を開始し、テンセントはウィーチャット上でメッセージに加え、金をやりとりできるサービス「微信支付(ウィーチャットペイ)」も開始した。
決済サービスは既存ビジネスの派生として展開されたため、決済業務自体で稼ぐ意識が希薄だった。
このため、決済に当たっての手数料はほぼ無償か極めて低価格で、中国における爆発的な普及の要因となった。
日本と中国ではキャッシュレスの担い手が異なるため、それはそのまま決済コストの差となり、キャッシュレス化の進展速度にも大きく影響を与えていると思われる。
ちなみに中国にももちろんクレジットカードは存在する。
しかし、クレジットカードを持てるのは一定の富裕層に限られている。
ただ、中国では銀行のキャッシュカードは「ユニオンペイ(中国銀聯)」と連動して、デビットカードとして使えるので、このデビットカードがスマホ決済の台頭以前のキャッシュレス決済の担い手だった。
つまり、中国でも以前はキャッシュレス決済を担っていたのは銀行だった訳だが、スマホの登場とともに、金融業界のアウトサイダーである巨大IT企業がキャッシュレス決済の主導役に取って代わったことになる。
クレジットカードの利用者が少なかったことも背景にある。
現在でもキャッシュレス決済の旗振りを銀行がやっている日本とは構図が大きく異なっている部分だ。
キャッシュレス進展には、中国政府に都合が良いという一面もあった。
「カネの流れ」が電子化されることにより、個人の経済活動は集積され、追跡可能となる。
治安の安定を最優先する中国当局はウィーチャットで国民間の情報のやり取りを監視しているとされるが、カネの流れも同時に吸い上げることが可能だ。
日本では収入や資産の情報を「お上」に知られることへの抵抗感が強い。
※続きはソースでご覧ください。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181223-00010002-jij-cn
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