小売業界などでは、輸入コスト低減や商品値下げに伴う消費拡大への期待が高まっており、大手スーパーのイオンは早くもオーストラリア産牛肉の値下げに乗り出した。一方、輸入品との競争激化にさらされる日本国内の畜産農家などは警戒を強めている。
イオンは今月上旬、豪タスマニア島から輸入した牛肉を最大2割値下げした。TPP11による関税引き下げ効果は初年度で1.8%にすぎないが、これを大幅に上回る「還元セール」をあえて発効前に行い、消費者の関心を高める狙いだ。
豪州産冷蔵牛肉の関税は現在29.3%で、協定発効後は16年かけて9%まで下がる。イオンの担当者は「為替相場や生産コストが今のままなら非常に大きなコストダウンになる」と関税引き下げの効果を強調。果物や水産品など他品目でも還元セールを検討中という。
関税引き下げの恩恵を直接受けない企業も、市場活性化などに期待する。食品大手の明治や雪印メグミルクなどは現在、一部のチーズを無税枠で輸入し、加工品を国内販売している。TPP11で競合する海外製品の関税も下がるが、「安価な輸入品が入ることでチーズが食卓に上がる機会が増える」(雪印)とむしろ歓迎する構えだ。
一方、海外の大規模農家にコスト面で太刀打ちできない国内の畜産現場からは「支援がなければ地域が崩壊する」(熊本県畜産農業協同組合連合会)と悲痛な声が上がる。担い手の高齢化や後継者不足で小規模農家を中心に経営は厳しさを増しており、安価な外国産流入は大きな打撃だ。
政府は、TPP11発効を控えた農家への支援策として2018年度第2次補正予算案に3200億円余りを計上した。ただ、来年1月下旬にも米国との通商交渉が始まるなど、国内農家には逆風となる輸入拡大の圧力が続く。
畜産業界には「後ろ向きでは何も変わらない。輸出を含めできることはやっていきたい」との声もあるが、全国農業協同組合中央会(JA全中)の中家徹会長は「自給率が下がれば生産基盤が弱くなる」と食料安定供給への懸念を示している。
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