日本は昨年9月末、最新の航空母艦(原文ママ)「かが」を旗艦に、潜水艦やミサイル護衛艦(DDG)など4隻からなる機動艦隊を南シナ海へ送り込んだ。「かが」は、太平洋戦争中にハワイの真珠湾を焼野原にした帝国海軍の空母「加賀」の名を継承する艦で、近々F35Bステルス戦闘機を搭載する計画もある。日本の空母機動部隊の南シナ海出現は、中国が領海だと主張する海域で自由航行を保障するための国際社会の努力の一環であると同時に、かつて太平洋を牛耳っていた日本海軍の復活を象徴する一大事件だった。
米国の本格的な圧迫で中国経済の負担が増す中、習主席は世界第3位の経済大国・日本とのスワップ協定を切に必要とし、遂にはメンツがあるにもかかわらず安倍首相の手を取った。少し前、韓国の3・1独立運動記念日と同様に位置付けられる南京虐殺記念日に、中国は生中継を行わず、習主席も出席しなかった。安倍首相も、「米国優先主義」を前にして、トランプ大統領の「忠犬」でいるより中国との関係改善を通して米中の間で保険をかけた。
外交とはこういうものだ。必要とあらば敵と手を携えることもためらわない。国益と実利の前に、イデオロギーやコード(政治的理念)は存在しない。毛沢東にしてもレーガンにしても、外交は徹底して現実主義に立ち、国益を追求した。ところが韓国はどうだろう? イデオロギーとコード人事の国内政治が外交を圧倒している。対米・対日外交の専門性を持つ外交官らが、「積弊」だとでもいうのか、次々と切られている。
対外依存度が100%に近い韓国にとって、世界市場への自由なアクセスほど死活的な国益はない。韓国国民が食べていけるかどうか、それにかかっている。ところが世界の市場は保護貿易の波に覆われている。韓国の株式市場から、昨年だけで262兆ウォン(約25兆8900億円)が蒸発した。世界の金融市場も超不確実時代に突入しつつある。経済大国の中国と日本すらスワップ協定を結んで備えているのに、映画『国家不渡りの日』のように陰謀論ばかりが乱舞する韓国のグローバル外交は見えてこない。
国連、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、アジア欧州会合(ASEM)、主要20カ国・地域(G20)といった国際舞台で、韓国の現政権は昨年、どこからも反響がない「北朝鮮制裁緩和」の声をひたすら上げるばかりだった。昨年8月にシンガポールで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)で、韓国外相は5回の2国間会談を行ったのに対し、北朝鮮は12回の2国間会談を行った。国際舞台において、韓半島(朝鮮半島)の主人公は北朝鮮に変わったらしい。「南北関係さえ良くなれば、あとはどうでもいい」というわけだ。外交は行方不明になり、対北政策だけが存在する。こんな状況でどうして、激しい風浪吹き荒れる周辺環境をかき分けて進んでいけるだろうか。
3度の南北首脳会談と米朝首脳会談にもかかわらず、北朝鮮の核兵器の在庫は増え続けている。中国は韓国に対して、まるで親が子を訓戒するかのように接し、朝貢関係の復活をもくろんでいる。高高度防衛ミサイル(THAAD)報復はいまだに進行中だ。
強制徴用に対する大法院(最高裁に相当)判決を契機として、韓日関係は国交正常化以来最悪の状況に直面している。その中国と日本が電撃的に和解した。韓米同盟さえしっかりしていれば、対中・対日関係が悪化しても、ある程度韓国への悪影響は遮断できる。しかし韓米同盟と在韓米軍に否定的なトランプ大統領が、どこへ飛んでいくか分からない。
韓米同盟さえもが揺らぐ瞬間、韓国は地獄の門前のごとき冷酷な現実と向き合うことになるだろう。金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長のソウル答礼訪問ばかりひたすら待つほど、韓国外交はのんびりしていられない理由がここにある。
尹徳敏(ユン・ドクミン)韓国外大碩座教授・前国立外交院長
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朝鮮日報<【寄稿】韓国に外交なし、あるのは対北政策だけ> 2019/01/01 09:53
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/01/01/2019010180014.html