政府は今月の月例経済報告で、「景気は緩やかに回復している」という判断を維持しました。
これによって今の景気回復の期間が6年2か月に達し、戦後最長となった可能性が高まりました。
政府は29日、関係閣僚会議を開いて今月の月例経済報告をまとめました。
それによりますと、個人消費を「持ち直している」としたほか、企業の設備投資も「増加している」という見方を据え置き、
景気全体についても「緩やかに回復している」というこれまでの判断を維持しました。
景気の回復や後退の時期は、正式には内閣府の有識者による研究会が十分な統計データがそろった段階で判定します。
ただ、政府が今月も景気回復が続いているという見解を示したことで、平成24年12月から始まった今の景気回復は6年2か月に達し、
平成14年2月から平成20年2月まで続いた景気回復を抜いて戦後最長となった可能性が高まりました。
一方で、今回の月例経済報告では、「輸出」について、中国向けの半導体製造装置や電子部品などを中心に
「このところ弱含んでいる」と判断を下方修正しました。
特に中国経済については、「緩やかに減速している」と明記していて、米中の貿易摩擦などを背景に世界経済の先行きに
不透明感が増す中、どこまで景気回復が持続するかが焦点となります。
茂木経済再生相「中国 景気下振れリスクに留意」
茂木経済再生担当大臣は、月例経済報告に関する閣僚会議のあと、記者会見し、「今回の景気回復期間は今月で6年2か月となり、
戦後最長になったとみられる」と述べました。
そのうえで、茂木大臣は景気回復の実感がないという指摘に対して「いざなぎ景気の頃は東京オリンピックから
大阪万博にかけての高度成長期であり、バブル景気の頃は株価や地価が大きく上がり、人口も増えている時代だった。
現在は人口が減少する中でも雇用者数がバブル期並みに増加し、景況感の地域間格差も小さくなっており、
今回の景気回復の優れた特徴ではないかと考えている」と述べました。
さらに景気の先行きについては「中国の実質成長率が昨年から徐々に減速しており、米中の通商問題を背景に、
輸出・輸入の伸びも低下している。中国経済の景気下振れリスクに留意する必要がある」と述べ、海外経済の動向が日本経済に及ぼす影響を注意深く見ていく考えを示しました。
麻生副総理兼財務大臣「景気は循環するもの」
麻生副総理兼財務大臣は閣議のあとの記者会見で、景気回復が続いている要因について「アメリカが、経済戦争の相手を
中国であって日本ではないという方向に切り替えたこと。そして国内的に言えば、いわゆるデフレ対策をこの5、6年やらせて
もらったこと。この両方が景気回復が74か月続いている背景だと思う」と分析しました。
そのうえで麻生副総理は、今後の景気の見通しについて「景気は循環するもので、よいときもあれば悪いときもある。
アメリカと中国の貿易摩擦や中国の景気後退を見ていると結構な課題になっており、よく状況を見て対応できるような準備を
いろいろと考えていかなければいけない」と述べ、景気回復を持続させるため、世界経済の動向を見ながら対応していく
考えを示しました。
菅官房長官「確かなものにするために対策」
菅官房長官は、閣議のあとの記者会見で、「景気回復が戦後最長となった『可能性』ということなので、これをさらに
確かなものにするためにしっかり経済対策に取り組んでいきたい」と述べました。