カタールはベストメンバーでしたが、システムを対韓国、対サウジアラビアの時と同じ352で臨んできました。日本は442ですから、システム上、噛み合わせが悪いことは百も承知でしょう。
3バックで2トップのプレスを外し、中盤中央で数的優位になるエリアを使ってズレを生んで攻める。もし、日本のプレスに対し、うまくボールを回せないと判断した時にも、”逃げ道”としてゴールキーパーから左サイドの3番ハッサン選手にロングパスを送ることで回避してきました。
また、今大会の日本代表は、左サイドは原口選手が長友選手の外側に早めに戻ってスペースを埋めますが、右サイドの堂安選手はカウンターの起点になるためにも、あまり早くから戻させないやり方になっています。カタールは、それを見越したように酒井選手の外側に10番のアルハイドス選手や11番のアフィフ選手がポジションを取るようにしてしてきました。先制点ではその位置から19番のアルモエズ・アリ選手の見事なオーバーヘッドシュートに繋げられました。こうした一つひとつの「対日本」を有効に活かしながら試合に入れたことで、カタールの若い選手たちはどんどん自信をもって日本に対峙できたように感じました。
攻撃においても、532で構える相手にブロックの外で”各駅停車”でボールを回してから攻めていこうとするため、532を敷く相手に対し、有効な手をなかなか打てませんでした。後半に入り、武藤選手を早めに投入し、南野選手のゴールに繋げるまでは良かったものの、次の交代は残り5分を切ってから。それも伊東選手を生かすやり方には見えませんでした。
2トップとサイドハーフの4人で高い位置からプレスをかける。それはどの試合でも見られました。それが成功する相手、例えばイラン戦ではいい試合ができました。
結局、抱えている問題はアジアカップを通して修正されたわけではなく、相手によって表面化したか、しないかであったように思いました。
日本のプレスのかけ方に対し、明確な解決策と技術をもつ相手、例えばカタールやサウジアラビアに対しては、あまりに無策であったと言わざるを得ません。そのなかで、選手たちが冷静な対応でしのぎながら、自然発生的に見出した選手たちの解決策で勝っていく。「自分たちで考える」と言えば聞こえはいいですが、それでは「対世界」になれば間に合わないと思います。
それは今大会だけでなく、半年前のロシア・ワールドカップのベルギー戦でも見られたことです。2点をリードしたなかで、具体的に明確な策を用意して攻めてきたベルギー。それに対し、日本は対応することなく、あるいは対応することができず、逆転を許してしまいました。
では、日本代表の「対応」とは具体的にどういったものなのか。相手に対し、チームとしてどんな「幅」を具体的にもっているのか。「対日本」の具体策を用意し、さらにそこに精度が伴う相手には”なんとなく”では太刀打ちできません。
それがはっきりとしたことがアジアカップの収穫と言えるでしょう。本来であれば、1か月あるアジアカップのなかで、解決策を垣間見たかった気持ちはありますが、4年後のワールドカップまでの道の途中、それも歩き出したばかりとなれば、これをステップとして捉えるべきなのかもしれません。
今大会で具体策を提示しなかったのが、カタール・ワールドカップまでの意図した戦略であることを願います。
【著者プロフィール】
岩政大樹(いわまさ・だいき)/1982年1月30日、山口県出身。鹿島で不動のCBとし2007年から前人未踏のJ1リーグ3連覇を達成。2010年の南アフリカW杯メンバーにも選出された。現在は解説者として活躍中。
全文:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190202-00053749-sdigestw-socc
【サッカー】岩政大樹「カタールやサウジに対しては、あまりに無策であった。自分たちで考えるでは間に合わない」
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