ドイツのメルケル首相は4日から2日間の日程で日本を訪問します。メルケル首相の日本訪問は、2005年に首相に就任してから5度目で、2016年のG7伊勢志摩サミット以来、3年ぶりです。
メルケル首相は滞在中、天皇陛下と懇談するほか、安倍総理大臣と首脳会談を行い、アメリカをはじめ国際的に保護主義的な動きが広がる中、自由貿易の推進など共通の価値観を持つ日本との連携を深めたい考えです。
また、今回の訪問にはドイツ企業のトップらが同行し、経済面での関係強化を図るほか、大手電機メーカーの最先端技術を視察するなどして、国際競争が激しくなっているAI=人工知能などのデジタル分野での日本との協力を確認することにしています。
ドイツはこれまで、アジアにおいては、経済的な観点から中国との関係を重視する傾向にありましたが、近年、先端技術の流出などへの懸念が高まっていて、今回の訪問で日本と中国との間でバランスを取りたい思惑もあるとみられます。
中国に警戒感の一方 日本との連携に期待
貿易立国のドイツは、近年、巨大市場を抱える中国との関係を強化することに力を注いできました。
ドイツ政府は、中国との間で、首脳や閣僚などが一堂に会する「政府間対話」をほぼ毎年行っていて、メルケル首相の中国訪問は2005年の首相就任以来、11回に上り、日本訪問の4回を大幅に上回っています。
また、貿易面での中国への依存も進んでいて、3年前からドイツの最大の貿易相手国は、アメリカに代わって中国になりました。ドイツの大手自動車メーカー、フォルクスワーゲンは、世界全体の販売台数の約4割を中国市場が占めています。
ただ、ここ数年、中国企業によるドイツ企業の買収が急増していることをきっかけに、先端技術の流出や安全保障への影響に対する懸念も急速に高まっています。
ドイツ政府は去年12月、中国企業による買収を念頭に、EU=ヨーロッパ連合の域外の企業が、情報通信や電力などインフラや防衛関連のドイツ企業に投資する場合、投資を認めるかどうかの審査を強化しました。
また、ドイツ最大の経済団体「ドイツ産業連盟」は、先月公表した提言書の中で、EUやドイツ政府に対し、知的財産権や技術の保護で中国に対抗するための対策を求め、注目を集めました。
一方、中国への警戒感の高まりとともに期待が集まっているのが日本との連携です。
EU=ヨーロッパ連合と日本との間では、今月1日、EPA=経済連携協定が発効。ドイツ政府は、自由貿易の重要性を世界に示すことができたと評価しています。
メルケル首相の側近で、知日派のフォルカー・カウダー連邦議会議員はNHKとのインタビューで、「日本とドイツの協力は密接だが、EPAは両国の関係をさらに推進させる力になるだろう」と述べました。
そのうえで、「日本との関係は貿易や経済にとどまらない。アジアで、日本ほど法の支配や民主主義が実践されている国はない」と述べ、価値観を共有するパートナーとして日本との関係が重要になっているとの認識を示しました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190204/k10011802351000.html