お嬢様「なんですの?」
関西弁のおっさん「なんですの?」
お嬢様「いいですわ」
関西弁のおっさん「いいですわ」
お嬢様「よろしい」
関西弁のおっさん「よろしい」
お嬢様「私をこんな目にあわせるなんて屈辱ですわ」
関西弁のおっさん「私をこんな目にあわせるなんて屈辱ですわ」
二つの「ですわ」にどんな違いがあるのか、それぞれの言葉のルーツを調べてみると日本語の面白い世界が見えてきた。
■お嬢様「ですわ」のルーツは?
まず「ですわ」を分解してみると、助詞の「です」と「わ」に分かれる。注目したいのは、語尾の「わ」のアクセントだ。
この「わ」には上昇調と下降調のアクセントがあり、上昇調だと女性的、いわゆるお嬢様言葉やオネエ口調に。下降調だと関西弁となる。文字にすると同じだが、お嬢様と関西弁では、そもそもアクセントに違いがあるわけだ。
続いて、それぞれの言葉のルーツを探って行こう。まずはお嬢様言葉の「ですわ」から。
「わ」が女性語として定着し始めるのは明治時代に遡る。近代教育制度が始まると、東京を中心に女子教育のための女学校が開設されていった。この学校に通う生徒たちの間で「よろしくてよ」「だわ」など、いわゆる女性語表現が形成されていったという。
ちなみにこのような「てよだわ」言葉、実は明治時代に流行が始まった頃は「下品」とみなされていたそうである。今でいうギャル語のような扱いだったわけだ。その後少女雑誌などを通じて戦前には女学生など都市部の教養ある女性の言葉遣いとして定着した。
当時の女学生や有閑マダムといえば華族や富裕層の子女であったから、れっきとしたお嬢様育ち。こうした流れで、彼女たちの言葉遣いが上品な女性(=お嬢様)のイメージになったということだ。
戦後に日常会話のジェンダーレス化が進んでも、こうした言葉遣いが女性的な役割語となって、我々現代人の頭の中にもイメージが定着している。マンガ・ドラマ・アニメとあんたの作品で典型的なお嬢様キャラクターがこれらの言葉遣いを多用して、お嬢様言葉のイメージは強化されてきた。
こういう語を、専門的には「役割語」と呼ぶ。例えば、老人の話者を示すときに「〜じゃ」という語尾を使うことがあるだろう。これが、典型的な役割語である。
■同じ「ですわ」でも…
では、関西弁で「役割語」を担うのは何だろうか。
まず浮かぶのは、語尾の「や」「やねん」、「おおきに」「さかいに」「ぎょうさん」「ごっつ」などだろう。「カードキャプターさくら」のケロちゃん(ケルベロス)や、「名探偵コナン」の服部平次など、アニメキャラの話し方で考えると分かりやすい。
総じていえば、現代の日常会話ではあまり使われない、誇張された話法と見ていいだろう。戦後のヤクザ映画やお笑いタレントの影響で関西弁のステレオタイプとして定着した、河内弁や泉州弁あたりのきつい表現だ。
では、「ですわ」はどうだろうか。このように、語尾に「わ」をつける用法は日常的に珍しくない。関西の男性はよく使っているイメージだ。そういう意味では、「ですわ」は純粋な役割語とはいえないだろう。
つまり、冒頭のツイートを改めて考えてみると、同じ「ですわ」とはいえ、関西のおっさんが使うのは日常方言(話し言葉)の側面が強く、お嬢様が使うのは、フィクションの世界で用いられる役割語の側面が強い。
このように、一口に「ですわ」といっても、アクセントのほかにこのような違いがあるわけだ。今回のツイートをきっかけにして、改めて日本語の面白さに触れられた。
2019年2月14日 12時0分 Jタウンネット
http://news.livedoor.com/article/detail/16019572/
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