【解説】 日本はイギリスへの信頼を失ったのか ホンダが英工場閉鎖へ
2019年02月19日
企業が大きな決断を下すとき、その理由がひとつしかないということは、滅多にない。
ホンダが2022年に英イングランド・ウィルトシャー州スウィンドンの生産工場を閉鎖するという報道に、多くの人はすぐさまブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)のせいだと槍玉に上げるだろう。
しかし、閉鎖の原因は他にもある。
2月1日に施行された日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)では、EUは2027年までに日本車の輸入関税(現在は10%)を撤廃する。
つまり、日本企業がEU域内に製造拠点を置かなくてはならない根拠が薄れているのだ。実際、ホンダは欧州のどこかに拠点を移すのではなく、欧州市場向けの生産を日本に戻す計画だ。
スウィンドン工場での生産台数はここ数年減っており、現在は生産能力の半分しか稼動していない。EPAは打撃の上乗せだ。
それでもやはり、日本企業はかなり先々を見通して長期的に投資する。1980年代後半、当時のマーガレット・サッチャー首相は欧州市場へのアクセスを求めていた日本の自動車メーカーに完璧な基地としてイギリスを紹介した。
これは当たった。日産自動車もトヨタ自動車も、そしてホンダも、イギリスの自動車産業に何百億ポンドも投資を重ねた。
EU離脱をめぐる2016年の国民投票の後、日本政府や駐英日本大使、日本企業の経営陣は繰り返し、ブレグジットの不透明感や英・EU間で摩擦のない貿易が失われることが、いかに悪影響をもたらすか警告を重ねてきた。
イギリスから投資を引き揚げるのはホンダだけではない。2月には日産が、英サンダーランド工場での「エクストレイル」の次期モデル製造を撤回。ソニーとパナソニックも、欧州本部をイギリスからEU域内に移した。
いずれの場合も、その理由は少しずつ違う。しかし日本人の多くは、イギリスがブレグジットについて確かな見通しを提示できなかったのは約束違反だと感じている。そのせいで両国のこれまでのつながりが、弱まってしまったと。
(英語記事 Honda: Is Japan losing faith in the UK?)