手術直後の女性の胸をなめたなどとして、40代の乳腺外科医が準強制わいせつ罪に問われていた事件。東京地裁(大川隆男裁判長)は20日の判決で、外科医を無罪とした。
本件では、2016年5月10日に東京都足立区内の病院で、右胸の腫瘍を切除する手術を受けた30代女性患者のA子さんが、病室に戻ってから、医師に左胸をなめられたなどして被害を訴えている。一方、外科医は一貫してわいせつ行為を否認し、無実を訴えてきた。
当日、LINEでAさんから連絡を受けた知人が警察に通報。駆けつけた警察官が、左乳首付近から微物を採取した。裁判では、警視庁科捜研による微物鑑定の信用性と、A子さんの証言の信用性が最大の争点となった。
検察は、被告人のDNAが含まれる唾液及び口腔内細胞が検出された、と主張。鑑定を行った研究員は経験豊富で知識や技術、技量は充分などと鑑定の信用性を強調し、被害を訴えるA子さんの証言も信用性が高いとして、医師に懲役3年を求刑していた。
一方の弁護側は、科捜研がDNA鑑定の際のデータやDNA抽出液の残りが廃棄していることなどから、「鑑定には客観的裏付けも再現性もなく、科学的信頼性がない」と信用性を否定。唾液やDNAは、手術前の触診や他の医師と術式を検討した際など付着する機会があった、としてきた。
さらに弁護側は、病室は4人部屋で当日は満床だったうえ、看護師らが頻繁に出入りしていたことなどから「事件は状況的にありえない」と主張。専門家証人が、A子さんの被害の訴えについて、「麻酔の影響による『せん妄』の可能性がある」と証言していた。
外科医は最終意見陳述で、「患者さんの安全はもちろん、医療者側の安全も守られる必要があります。公明正大な判断を望みます」と訴えていた。
「無罪」とする判決主文の後、法廷では理由が読み上げられている。
事件の詳細と詳しい争点はこちらへ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/egawashoko/20190220-00115421/