安倍晋三首相は閣議で消費増税実施を発表し、「経済に影響を及ぼさないよう特別の措置を講じる」と指示した。
補助金の拡充やポイント還元制度の創設などが検討されているというが、複雑怪奇な“弥縫策”に、現場では混乱が広がっている。
それがどんな影響を及ぼすかを知っておけば、消費者が取るべき行動が見えてくる。
前回(2014年4月)の消費税率5%から8%への引き上げ後は、消費が一気に冷え込み、景気悪化で給料は下がり、
国民生活は一段と苦しくなった。「特別の措置」が必要なのは、来年の増税ではそれ以上の負担と混乱が予想されるからだ。
本誌・週刊ポスト前号では、消費税が10%に上がる前に、「買っておくもの」「買わなくていいもの」を仕分けした。
増税と聞けば「買いだめ」に走りがちだが、前回は増税後の消費の冷え込みで投げ売りされて値段が大きく下がった。
増税前の駆け込み消費で高値掴みさせられたケースも少なくない。
生活防衛のためにはどうすればいいか。
保存のきく医薬品は増税前に買い置きするメリットがあるが、増税後も特売対象になりやすいトイレットペーパーや洗剤など
日用品は慌てて買う必要がない。家電なら冷蔵庫や洗濯機など値崩れしにくい「白物家電」は増税前、モデルチェンジが早く
値崩れしやすいテレビやパソコンは“待て”というのが節約術の専門家の指摘だ。また、高額商品の自動車や一生の買い物になる住宅は、
増税後に住宅減税や自動車減税が実施されれば、急いで買うのが得策とはいえない。
◆現金払いは「悪」なのか!
経済ジャーナリストの荻原博子氏が指摘する。
「政府の増税対策のメニューにあるのは、物をどんどん買うなら還元するという景気対策。高齢者や低所得者など、
消費増税の影響を最も受ける層の負担を軽くするものではありません」
安倍首相が目玉に掲げたのが「ポイント還元」だ。中小の小売店で商品を購入した客に、税金を原資に価格の2%分のポイントを
つけるというもので、ためたポイントは商店やネット販売の代金支払いや値引きに使える。だが、対象になるのはクレジットカードや
電子マネーで購入した場合だけ。現金払いだと“戻し税”の恩恵を受けられない。前出の荻原氏が語る。
「政府の家計調査によると、65歳以上の世帯(2人以上)の食費を除いた1か月の平均消費支出は約18万円、年間約216万円です。
2%のポイントがもらえないと約4万円を失うことになる」
政府はポイント制を「中小零細商店対策」と説明しているが、商店街の飲食店経営者はこういう。
「うちはカードも使えない小さな店ですから対応できない。それにもともとポイント還元商売は大手チェーンが得意としているし
消費者にもそのイメージが強い。お客さんの足が遠のいてしまうのではないか」
税理士でもある立正大学教授の浦野広明氏が政府の狙いを指摘する。
「中小商店にまで電子決済を導入させ、税務当局が店の売り上げから客が何を買ったかの資産状況まで正確に把握して
課税できるようにするのが狙いでしょう」
ポイントをもらえる人も喜んでばかりはいられない。