14日、シンガポールでの日露首脳会談で、「1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結の交渉を加速することで合意ができた」と安倍総理が言ったことで、日本、ロシアの双方で騒ぎになっている。
日本では、4島のうちいくつで手を打つべきかという勇み足の交渉技術論が盛り上がり、日本での熱狂ぶりを伝え聞いたロシアでは、日本に自国領を渡すのはけしからんという怒りの声が聞こえる。
しかし外交官としての現役時代から30年弱、北方領土問題に直接、間接に携わってきた筆者には、この問題を今動かそうとすることは、日本を取り巻く国際情勢を十分読んだ上でのこととは思えず、これまで何度も繰り返された「独り相撲をやってはすっころぶ」空騒ぎの再現にしか見えない。
どうしてそう言えるのか?
■4島は一貫して日本領だった
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■プーチンはやはり「棚上げ」狙い?
1956年、日ソは戦争を終結し、国交を回復する「日ソ共同宣言」に署名、これを条約として双方の議会で批准した。領土については、国後と択捉の問題で合意ができなかったため、平和条約とはならず、「共同宣言」としたものである。
つまり今年の9月プーチン大統領がウラジオストックで言った、「領土問題を棚上げした平和条約」は、この日ソ共同宣言をそのまま平和条約に昇格させようというもので、1956年当時の交渉の経緯に頬かむりして日本世論をあざむくものだと言われても仕方ない。
ちなみに、この日ソ共同宣言の頃からすでに、日本は歯舞・色丹だけで満足するべきだという声が、日本国内にあった。
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■ソ連崩壊後、2回のヤマ
■18年間で一変した国際情勢
■米国の子分に譲歩はしない
米国は、日本が同盟国だから沖縄を返したのだが、日露は同盟とは正反対の関係。ロシア人にしてみれば、「日本が日米同盟を破棄して裸で飛び込んで来れば、島の1つくらい返してやってもいいよ」程度の話しになってしまう。
よく、「島に米軍基地を作らせないと、日本が約束すれば、ロシアも島を返してくれるかもしれない」と言う人がいるが、事態はそんな甘いものではない。
米軍基地云々の話しは、今の米露関係のままでは北方4島(特に国後、択捉)は返せないことを、ロシアが別の言葉で言っているに過ぎない。日本が大変なリスクを冒して、北方4島に進出しない約束を米国から取り付けたところで、ロシアは別の口実を持ち出してくるだけだ。
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■「2島先行返還」は可能なのか?
筆者は18年前、2島先行返還が実現すれば、その勢いを国後、択捉返還につなげていくことが可能かもしれないと思っていた。日本の予算で歯舞・色丹の住民の生活水準が急上昇し、国後・択捉の住民の気持ちが揺らぐだろうと思ったからである。
しかしロシアの経済力は回復し、国後・択捉の住民の生活も大きく改善されている。だから、歯舞・色丹の2島返還で平和条約なり、善隣条約を結べば、ロシアは「日本との領土問題はこれで最終的に解決された」と宣伝し、国後、択捉についての交渉を拒絶してくるだろう。
それどころか、歯舞・色丹の2島でさえ、戻って来ない公算が高い。
今回、安倍総理が「1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結の交渉を加速することで合意ができた」と述べた次の日、15日にプーチンは「歯舞・色丹を『引き渡す』と言っても、56年共同宣言には何をどう渡すのか書いてない」との趣旨を公言している。
同じ言葉をプーチンはこれまでも、何回も発している。
「日ソ、日露間でこれまで議会も批准した合意は1956年の共同宣言だけ。自分は、この共同宣言に書いてない国後、択捉のことについて話し合う気は毛頭ない。それに、歯舞、色丹も『平和条約締結後に引き渡す』と書いてあるだけで、いつ、どのように、主権は日露いずれに属する形で、とは書いてない」という屁理屈で、要するに話し合いをゼロという、ロシアにとって有利な出発点から始めたいということなのである。
■北方領土問題を「解決」して参院選勝利?
以下ソース先で
2018年11月21日 7時0分
現代ビジネス
http://news.livedoor.com/article/detail/15626191/