「日本国籍の韓国人」から見える社会の構造 反響を呼びニュースに 本も出版
2019年2月4日 16:55東京新聞
〈ひと物語〉在日3世のライター・金村詩恩さん
埼玉育ちの在日三世。好物はチャンジャ。韓国語は苦手。ブログやウェブマガジンで発信を続ける県内在住のライター金村詩恩さん(27)は、そんな自分を「日本国籍の韓国人」と表現する。
常に持ち歩くノートに気になったことを書き留め、自身のルーツを織り交ぜながら政治や社会を切り取ってきた。例えば、国会で入管難民法改正案が審議されていた昨年十一月のブログには、こうつづっている。
「日本にも移民がやってきた」と語るひとたちを横目に、「昔からこの国には『安価な労働力』だった移民がいたんだよな」と「安価な労働力」の子孫である私がひとりごちる。そのひとりごとは真新しい「移民」ということばでかき消されてしまう。まるで、そんなことは今までの日本ではなかったと言いたいように。
小学生の時に家族で日本国籍を取得した。当時の金村さんに「警察官になりたい」という夢があったからだ。両親に「自分のルーツは話すな」と言われながら、小学校から大学までは日本の教育を受けて育った。
大学四年の春、学食で一枚のビラを見かけた。「朝鮮人が日本を支配している」と在日コリアンを敵視する内容。「大学の中までヘイトが来たかって感じだった」。国境と民族のはざまにいる自分の思いを、文章で表現するようになった。
反響の大きかったブログ記事がある。二〇一七年一月の「拝啓 デマサイトを管理していた人へ」。ニュースサイトを装って韓国を中傷する「フェイクニュース」を発信していた男性宛てに、手紙形式で書いた。
「あなたのもうかりたいというちょっとした気持ちで書いたフェイクニュースによって、路上で『朝鮮人は帰れ』『韓国人は死ね』と口汚い言葉を吐くようになってしまう現実がある」「私の平穏な日常と未来を返してください」
記事はネットニュースで取り上げられ、大きな注目を浴びた。その後も発信を続けるうちに出版社の目にとまり、一七年末にブログをまとめた本を出版。同時に実名も明らかにした。
反応はさまざまだ。「まだ分かってないな」と言う在日の年配者がいれば、「自分たちの気持ちを素直に言ってくれた」と喜ぶ若者も。「『国に帰れ』はしょっちゅうある」と笑う。
出版後は寄稿をする機会が増え、活躍の場は広がった。新たな出会いも多い。今は、韓国以外の海外ルーツやトランスジェンダーの人の話に興味を持つ。「マイノリティーに共通する部分から社会の構造を問い掛けたい」 (井上峻輔)
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2019/02/04(月) 17:11:26.05
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